【塩こうじ】を作っていて思ったこと

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日本の食生活に欠かせない味噌、醤油、酒。これらの製造に欠かせないのがコウジカビです。
 コウジカビはアスペルギルス (Aspergillus) 属のカビの一つで、紅麹菌、黒麹菌などはコウジカビの品種です。写真左のボールの中でお米に繁殖している白くふわっとしたものがコウジカビ。これは、スーパーなどで「こうじ」として売られているものです。この「こうじ」のコウジカビは黄麹菌で、黒麹菌から派生した白色変異種だと言われています(高橋 2013)。

 この「こうじ」を使って、発酵調味料の「塩こうじ」をつくります。 
塩こうじでは、麹の重さの1/3程度の塩量と麹がかぶる程度の水を用いて作るため、コウジカビは高塩濃度環境に置かれています。このような高塩濃度では高い浸透圧のため、微生物は普通は繁殖できません(好井 1967、潮見井 2016)。
 仕込んだ塩こうじをみていると、日を追うごとに米粒が徐々に壊れていくのが観察されます。分解が起こっているのですね。この米の分解は、コウジカビが持つ酵素によって「糖化」が進んでいるのです。約一週間後の瓶の中では(写真下)、上部層には分解の進んだ米粒が、瓶の底の方には十分に分解の進んでいない米が沈殿し、分離がみられました。f:id:bmiko:20170721094351j:plain
 瓶の上部層には気泡がみられ、発酵が起こっています。この気泡は、酵母がコウジカビの酵素によって作られた糖を利用して、アルコール発酵をした過程で生じた二酸化炭素のようです。

 酵母の中には高塩濃度による高い浸透圧条件下でも、浸透圧調節を行うことができるものがいます(潮見井 2016)。この瓶で発酵している酵母高塩濃度下でも繁殖できる酵母なんですね。そういった酵母などの微生物によって、味噌や醤油も作られています(東京農業大学 2013)。

 微生物によってうまれたさまざまな調味料は、その調味料が持つ酵素で食材を分解して食べやすくしたり、旨み成分によって食材に風味を与えてくれます。食生活を豊かにしてくれているのですね。

 ちなみに、この写真の状態で瓶のなかの匂いを嗅ぐとバナナのような香りがしています。これでほぼ完成。発酵がこれ以上進まないように冷蔵庫にいれて保存し、料理に利用します。

【塩こうじの作り方】
■材料

・麹 300g
・塩 100g
・水 かぶるくらい

■作り方 ①麹を良くほぐし、塩を振って良くすり混ぜる。
②滅菌した瓶に①を入れて、麹がかぶるくらい水を加える。
③栓は緩めて置いて、常温で2週間ほど保存。毎日、かき混ぜる。
④お米の粒が少し不明瞭になって、バナナのような香りがしてきたら、できあがり。
冬場で2週間ほど、夏場だと1週間ほどでできあがります。
できあがったら、発酵を遅らせるために冷蔵庫で保存します。


【引用】
潮見井純(2016)微生物と浸透圧ストレス. 食品工業技術センター ニュース. あいち産業科学技術総合センター食品工業技術センター. 2-3. http://www.aichi-inst.jp/shokuhin/other/up_docs/news1601-2.pdf
高橋治男(2013) クロコウジカビAspergillus nigerとその近縁菌、黒麹菌の安全性について. 一般財団法人 食品分析開発センター http://www.mac.or.jp/mail/130601/02.shtml
東京農業大学 (2013)『醸造のふしぎ』-微生物が醸す世界-. 【食と農」の博物館 展示案内No.58-(2) http://www.nodai.ac.jp/syokutonou/exhibition/58/58_02.pdf
好井久雄(1967)食塩と微生物(1)高塩細菌の特性について. 62: 43-49. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbrewsocjapan1915/62/1/62_1_43/_pdf